
職人と作家活動の両立、高岡は理想的な環境。
上田 剛さん銅器着色職人
出身/奈良県
移住年/2012年
家族構成/妻、子ども
ふたつとない斑紋。 高い着色技術に魅了
上田剛さんは、高岡銅器の最終工程である着色を手掛ける職人。鉄奨色や朱銅色など、日本酒、食酢、米糠などを用いた伝統的な着色技法で、味わい深い色を生み出す。奈良県出身の上田さんが高岡に移り住むきっかけになったのは、金沢美術工芸大学工芸科時代に、インターンシップで訪れたモメンタムファクトリー・Oriiで着色技術に魅了されたからだ。その後、東京藝術大学大学院美術研究科工芸学部で着色技術を研究。修了後、2012年に同社に就職した。「銅板、真鍮など素材によって異なる表情が生まれます。予想外の発色、出来栄えに驚くこともあります」と着色の魅力を話す。

高岡の地に根ざして活動
金属作家としての顔も持ち、プライベートでは鋳金の技法を用いた作品づくりに励む。一般に開放されている高岡市デザイン・工芸センターの鋳造設備を利用し、金属を溶かして型に流し込む。「どろどろに溶けた金属が表情を変えていく醍醐味があります。個人で鋳造の炉を持つのは容易ではありません。仕事と作家活動を両立できる高岡は理想的な場所」と上田さん。高岡鋳物発祥の地・金屋町にある金属工芸工房「かんか」で若手工芸作家らと共に作品を展示。また、15年の高岡クラフト市場街のイベントでは土蔵造りの空間を生かし、陶芸家やフローリスト、DJと展覧会を開き、異業種との輪も広がった。「伝統工芸やクラフトにどっぷり浸かるのではなく、“ノイズ”のような存在になりたい。作り手自身が楽しいと感じられる企画に取り組んで高岡を盛り上げたい」と意気込む。
上田さんは2013年に美大時代の同級生で陶芸家の麻穂さんと結婚した。名古屋出身の妻も自然豊かで海の幸に恵まれたこの土地が気に入っています」と話す。16年9月には長女が誕生し、仕事も家族も高岡に根ざしつつある。

