唯一無二の発色と模様に魅かれて高岡へ。

堀内 茉莉乃さん銅器着色職人

出身/東京都
移住年/2015年
家族構成/一人暮らし

着色技法に触れたいと、Orii初の女性職人に

アニメーターの両親の下で育った堀内茉莉乃さんは幼い頃からものづくりやクリエイティブな世界に興味を持ち、東京都立工芸高校と京都伝統工芸大学校で金属工芸を学んだ。卒業後、金工の仕事に携わりたいと、インターネットで検索していて目に留まったのが高岡銅器の着色メーカー、モメンタリーファクトリー・Oriiのホームページ。銅や真鍮に着色された斑紋ガス青銅色や斑紋茶褐色などの発色、深みのある存在感に魅了された。求人募集はなかったが、いてもたっても居られず、工場見学と面接を兼ねて、すぐに高岡へ。「生まれて初めて訪れた北陸の街。やりたい仕事が最優先で、高岡がどこにあるのか関係ありませんでした」と堀内さん。高岡に降り立った日の天気は雪。情趣のある美しい風景が広がっていた。都会のような慌ただしい雰囲気、窮屈な感じがなく、暮らしやすそうだと感じた。
面接で折井宏司社長に「現場で仕事をしたい」と伝えた。金工や着色への熱い思いを感じた折井社長は、採用を決めた。同社で初めての女性職人の誕生だった。

金属を解ける寸前の温度まで熱し、液の中で急冷する「硼砂焼き」。一枚一枚違った味わいの緋銅色が出る
金属を解ける寸前の温度まで熱し、液の中で急冷する「硼砂焼き」。
一枚一枚違った味わいの緋銅色が出る
鉄をお酢に数年~数十年漬け込んだ鉄漿液を使い、
金属を熱しては鉄漿液で掃くを繰り返す「おはぐろ」。
徐々にツヤのある飴色を作り出す
鉄をお酢に数年~数十年漬け込んだ鉄漿液を使い、
金属を熱しては鉄漿液で掃くを繰り返す「おはぐろ」。
徐々にツヤのある飴色を作り出す

やりたかった仕事に出合えて、充実した日々

薬品や化学反応を用いた金属着色が主な仕事。高温のガスバーナーで金属の表面を焼くと、独特の発色と模様ができあがる。鉄の錆と酢の成分を金属の表面に焼き付ける「おはぐろ」や、大根おろしで金属を洗浄したあとに色付けする伝統的な技法に、革新的な発想を織り交ぜた技法を用いる。同じ模様はひとつとしてなく、仕事に就いて3年経ったいまも驚きや興味は深まるばかりだ。
退社後や休日には、金工作家としてピアスやリングなどのジュエリー、器や花器などの小物をつくる。金属の持つ重量感や素材感、高級感のある作品づくりがテーマ。自分が身に付けたいと思うようなデザインを考える。形が複雑なものにも挑戦している。高岡鋳物発祥の地・金屋町にある金属工芸工房「かんか」で作品の展示・販売、年に1回の展覧会も開いている。
銅器づくりの優れた技術が集積している高岡。県外から移住してきた作家から刺激を受けることも多い。「高岡には生活するための収入を得られる仕事があり、伝統的な技や技術も学べる。東京や京都では同じ仕事はできないと思います。そして、暮らしやすい環境にも恵まれています」と、堀内さんは高岡の魅力を語る。

堀内さんがデザインしたiriséシリーズのジュエリーもモメンタムファクトリー・Oriiのネットショップで販売している
堀内さんがデザインしたiriséシリーズのジュエリーも
モメンタムファクトリー・Oriiのネットショップで販売している